見過ごしている、ケタ違いの成長軌道のポイント

平凡な会社をケタ違いの成長軌道に乗せる経営で重要ポイント以下2点について考え方、エッセンスとそれを見出した出来事ともにお伝えします。

11.せっかく、賞与出した「のに」

中小企業の人事評価制度に限っては、ゆるみ・曖昧さや人間味のある「愛のひと手間」が加わった方が良い。システム化し過ぎると、全ての行為・行動、善意や思いやりさえも数値になってお金に直結して色褪せる。


栃木県の足利市出身の書家、相田みつを氏の作品の中に[あんなにしてやったのに『のに』がつくと愚痴が出る]という書があります。

12月という賞与の時期になると、この書が重なって思い出すことがあります。

 

中小企業の社長Yさんが私に話してくれました。

…会社経営をしていると取引先に対しても、社員に対しても「のに」が出てしまう。ここまでしたのだから言葉で言わなくても分かってくれるだろう、こう返してくれるだろうと期待してしまう。たいてい期待は裏切られ、がっかりして「のに」が出てしまうと。

Y社長の話は賞与と社員の退職に変わりました。

…経営状態に余裕はないけれど無理して賞与を出した。不公平にならない様に一律で出した。そしたら一週間も経たない内に2名の退職者が出た。

  • 一人は勤続15年のベテラン、愚痴ひとつ言わずに黙々と真面目に働く社員。

「俺は金の事は言いたくないから文句は言ってこなかった。社長はちゃんと見ていてくれると思ったからだ。だけど、良く考えたら10年近く給料は上がっていないし、今回の賞与は一律だというじゃないか。社長は俺のどこを見ていたのですか、この会社の給料はどうやって決まるんですか。」

就業規則の賃金規定はあるものの評価基準も昇給・賞与の仕組みもありませんから社長に弁明の余地はありません。文句を言わない社員は「満足している」と思って個人別の賃金の推移に注意してこなかったのです。

日頃文句を言わない人ほど一度口にしたことを撤回はしないものです。残念な事に宝のようなベテラン社員を引き留めることは出来ませんでした。

  • もう一人は、賞与支給日の3週間前に社長室に現れて「社長給料上げてください。俺、けっこう頑張ってますよ。もう少しあげてもらわないとやる気が出ません」と直談判に来た社員。

自己評価は高いけれど、仕事はまだまだな社員ですが今辞められると困るので、ひとまず賞与に色を付ける約束をしました。ところが急に会社を辞めると言うので理由を聞くと以前から転職先を探していた。同業で当社より条件の良い所が見つかった。そんな本音を隠してゴネてきて、社長はそれを受けてしまったのでした。

こんな思いは本当にしたくないものです。

そのためにも給与の仕組み、人事評価制度を整えておいた方が良いのです。

だからといって簡単に作ってはいけないのです。例えば次の5つのことは要注意です。

  • パッケージ化された制度で評価項目を用語事例集から簡単に選ぶ
  • 方程式、計算式で評価点数から金額までがシステマチックに決まる
  • 作ったらすぐに導入・徹底
  • 評価する側(考課者訓練)だけ研修する
  • 学校の先生の面談のような上から目線のフィードバック面接をする

導入して数年たっても期待した成果が出ずに人事評価制度が「絵に描いた餅」或いは突然の廃止になった事例をたびたび聞きます。

 

■人事評価制度は経営戦略にも企業文化にも大きな影響を及ぼす重要な仕組みですからじっくり腰を据えて創らなければならないのです。

◎まず評価項目です。基本軸は経営理念であり経営ビジョンです。これを堀り下げ、ブレイクダウンし、こうなって欲しい、こう頑張って欲しい、こう成長して欲しい、こういう人生を歩んで欲しいというお節介なメッセージ、望ましい社員像を描くのです。これを強引に押し付けるのではなく、方向性・フェアウェイを指し示すのです。達成・習得はすぐにではなく、いつかでいい、それくらいの大らかさが必要です。

◎あまりにシステム化し過ぎると、全ての行為・行動、善意や思いやりさえも数値になってお金に直結することに思えてきます。内側のやる気、遣り甲斐、向上心、好奇心、達成感など内発的な動機付けや善意の行為を阻害しかねません。

中小企業の人事評価制度に限っては、ゆるみ・曖昧さや人間味のある「愛のひと手間」が加わった方が良いと思うのです。

◎完成後直ちに本格導入ではなく、部分的にテストしながら、勉強会なども挟みながら徐々に進めます。但し、進捗だけは社員にオープンにした方が良いです。会社は人事評価制度に取り組んでくれていると安心します。周囲に大企業に勤務している人がいると人事評価制度がないというだけで「ブラックじゃないの」と余計な助言をします。

◎研修すべきは評価者だけでなく、評価される側の方が大事です。評価制度の背景に何があるのか、なぜそのことが大事で、評価結果をどう受け止め今後の自分の成長にどう繋げるのか正しい価値観を教え・示すのです。従来型の考課者訓練は評価する側に期待し過ぎなのです。評価結果をどう活かすかの主体は評価される側にあるのです。

◎フィードバックは上司の姿勢と言葉で一変する

部下の人事評価結果は指導・育成役である上司自身の評価でもあるのです。自分の能力不足を棚に上げ「お前はここがまだまだだな、もっと頑張らないとね」

上司・先生面は逆効果です。「忙しくて教えてやれなかった俺の指導力不足だ。これからは時間作るから頑張ろうな」といった謙虚な姿勢と愛ある一言がフィードバック面接を一変させるのです。

 

人事評価制度は合理的に賃金を決めるだけのシステムだと私は思っていません。

新聞記事や人事関連書籍でよく目にする成果給やジョブ型給与も日本の中小企業には例外を除いて不向きだと感じています。

中小企業の人事評価制度は、やめて欲しくない人財の定着、会社のビジョンと社員のキャリア形成・ライフプランのシンクロ、そして仕事自体に意味を求める「やる気」人財を外から引き寄せる手段だと思っています。

(昇給・賞与の財源を稼ぐ機能も重要。今回は触れていません。)