見過ごしている、ケタ違いの成長軌道のポイント

平凡な会社をケタ違いの成長軌道に乗せる経営で重要ポイント以下2点について考え方、エッセンスとそれを見出した出来事ともにお伝えします。

1.見えないけれど、確かに存在する「好き」のエネルギー

経営計画を絵に描いた餅にしてしまうA部長に「管理職失格だ」と一喝、熱血コンサルタントの外圧的支援の勘違い

◎人から言われなくても自分から、損得勘定を超えて全力を出し切る。
消費しても自然に再生され、決して枯渇しない、燃え尽きもしない。持続可能なモチベーションエネルギー発見


私が猪突猛進、熱血コンサルタントだった頃、かれこれ20年以上前の平成時代の話です。中期経営計画策定支援と進捗管理支援を中小企業に提供していました。経営者に特に評価されていたのは進捗管理支援、「厳しい外圧的存在」で、立案した経営計画の実行を強く迫り業績目標達成を後押しするという私の得意技でした。数値データ、会議議事録を裏付けにして経営計画の新規テーマの進捗が遅い管理職を厳しく追求し、リカバリー策を引き出し、実行を確約させる役割です。自分では社長の代弁者だと本気で思っていました。

コンサルタントは「嫌われてなんぼだ」と一途に思っていたので、支援企業の管理職には大変恐れられていました。

毎月定例的に行われる「経営計画進捗会議」に出席し、順番に管理職の報告を受けます。私の追求は社長以上に厳しいので、報告書を持つ手と報告する声が震える管理職もいました。会議にはルールがあり、報告書は会議の2日前までに参加者宛事前配布することになっています。

ところが、ある会社にいつも当日にコピーを配布し、投げやりでふてぶてしい態度、言い訳ばかりの報告をするA部長という私の天敵がいらっしゃいました。

ダラダラした報告に我慢ならなくなった私はA部長の報告を途中で遮り、「出来なかった、やれなかった」の言い訳を厳しく追求しました。A部長は「仕事が忙しくて無理です」の一言で跳ね返します。

経営計画に掲げたテーマの中には「仕事を楽にする効率化施策」も入っているのに「仕事が忙しい」を理由に手付かずというおかしな話です。「ふざけるな」と私は喧嘩腰で詰め寄ります。傍から見ていれば、A部長と私の激しいバトルでしかないやり取りも、他の管理職には「明日は我が身」です。A部長以外の管理職も私の追求を恐れ、やらされ感を全身にまといながらも経営計画の施策に取り組んでいました。

会議室は緊張感に包まれ、酸欠寸前の状態、私にこっぴどく攻め立てられたA部長はうなだれています。私はA部長の能力を疑い「管理職失格だ」と決めつけ、自分のやり方を省みることはありませんでした。

ところがある年の11月のことです。A 部長の会社からゴルフコンペのお誘いがありました。ゴルフは得意ではないのでお断りしたら、社長から直接の電話でどうしても参加して欲しいというのでやむなく了解しました。

11月の午前6時はまだ暗く、あいにく小雨が降っていてとても寒く「こんな日は学校行事なら中止だ」と思いながら集合場所に行きました。神奈川県の大山近くのゴルフ場の駐車場にはレインウエアを着た30人以上の暗い影、参加者の3分の2は60代~70代の中小企業の経営者でした。

少し霧もあったので視界は悪く、グリーンではボールが水しぶきを上げながら転がります。私はボール探しの時間が長く、靴の中は靴下までびしょ濡れでガタガタ震えていました。他の人たちも当然同じ状態で、私よりも年配の方たちへの体への負担は相当なはずです。

しかし皆さん楽しそうで、嬉々としてボールを霧の中に打ち込み、斜面で滑って転んでも、奇跡の一打を諦めていませんでした。

幹事はA部長でしたが見事な采配で皆さんを誘導し、記念撮影、懇親会演出、そしてお見送りまで完璧にこなしていました。経営計画進捗会議の姿とはまるで別人、恐るべしA部長でした。

ゴルフコンペの帰り間際にA部長に声をかけました。「こんな天候なのに皆さん楽しそうでしたね。A部長も楽しそうで企画も采配も完璧でしたね。」と褒めねぎら言ってから「仕事でもないのに、なんでこんなにも一生懸命やれるの」といやみを交えて聞きました。A部長は「好きだからですよ、決まっているじゃないですか」と即答でした。「なんで好きなんですか、どこが楽しいんですか」とたたみかけると「理屈じゃないですよ。好きだから、好きなんです」と、すがすがしい笑顔で断言です。

昇給・賞与の評価には無関係の会社の行事に対して、自分から全力を出し切り、しかもすがすがしい笑顔になれる。「好き」って言うのは説明しにくく、分かり難いけれど、確かに存在する不思議なエネルギーだと実感しました。しかも、このエネルギーは消費しても自然に再生され、枯渇も燃え尽きもしません。コストもかからない持続可能なエネルギーなのです。

働き方改革、ワークライフバランスで「仕事」と「好き」なことは一日24時間のシェア争い、対立的な関係になっています。だから、夢中になって楽しむ対象から「仕事」が外されてしまっているのです。

しかし、人財の確保がさらに厳しくなる中、給与や休日などの労働条件や福利厚生で改善を図るのではなく、仕事自体をいかに面白く、遣り甲斐が持てて「好き」になるようにあの手、この手、様々な工夫をする方がコストパフォーマンスが良く、持続性があると考えられます。しかも酸欠状態に陥ることもありません。