見過ごしている、ケタ違いの成長軌道のポイント

平凡な会社をケタ違いの成長軌道に乗せる経営で重要ポイント以下2点について考え方、エッセンスとそれを見出した出来事ともにお伝えします。

2.仕事が「好き」な人と「苦痛」な人の仕事の「差」

やらされ仕事は、時計が止まったように遅くて重い時間の経過。
機械相手に愚痴を言いながらの日々苦痛

◎目立たず、居るのが当たり前になっている、仕事が「好き」な人は人財・宝。そういう社員の定着も集まるかも社長次第。


私の叔父は社員数20人程のプレス工場を経営しています。今は代替わりをして長男が社長を引き継いでいます。

私が学生の頃欲しい物が出来た時、旅行に行きたくなってお金が必要になった時にアルバイトをさせてもらいました。採用面接もなく、翌日から働くことが出来たので助かりましたが、いつも長続きはせず2週間続けば上出来でした。

厚さ数ミリの大きな鉄の板を製品の大きさに切る工程からはじまり製品になる迄に5工程以上、形の異なるプレス機を経てようやく仕様書通りの形になります。

一つのプレス機で一つの作業をして、何になるのか分からない形の製品を台車に乗せて、それがいくつか溜まると次のプレス機の横に設置してある鉄のかごのところまで持っていきます。

軍手という丈夫な手袋も製品のバリというトゲトゲのせいで半日で穴があき、新しいものと交換するのですが1日の仕事が終わった手は傷だらけになって石鹸が沁みました。 単純作業なので時間が経つのが本当遅く感じ、5分おき10分おきに壁の時計を見てしまいます。

お昼休みのサイレンがなると食堂に駆け込み、保温機能がある弁当箱にぎっしり詰まったご飯と地味なおかずを残さず食べました。(代金はバイト代から引かれます。甥っ子ですが特別扱いはありません)

食後は工員の人たちと卓球やキャッチボールをしました。その時の私は何の得もないのにキャッチボールや卓球にヘトヘトになる迄全力を出しました。元気な昼休みの後はまるで別人のように終業のサイレンが鳴る迄、機械相手にブツブツ愚痴を言いながら重い時間を消化しました。

プレス機が製品を加工する際はガチャンと上の型と下の型が重なります。その間に手が挟まれれば大変なことになるので、金型が重なる時に腕が引っ張られる安全ベルトをして作業をします。自分の工程が終わった製品を次の工程に運ぶとき、ベルトを外さなければならないのでとても面倒でした。今ではセンサーで自動的に機械が停止しますが昔は間違って人の手が入っても止まらないので忙しい時にベルトをしないで作業して、指を落とした人は多かったのです。危険で単純で力仕事で、夏は暑くて冬寒い工場での作業は苦痛でした。

ある日社長から「機械を止めてちょっと来い」と声を掛けられました。社長は私の次の工程の籠の中から、私が作業した製品を取り出そうとしましたが、製品のバリとバリが引っ掛って上手くは取り出せません。

次に私の機械の横にある籠の中の、前工程の加工が終わった製品を取り出しましたがとても簡単に取り出すことができました。

「この違いが分かるか」と社長に睨まれ、はじめは何を言われているのか分かりませんでしたが、籠の中をよく見て気づきました。私の籠の中は製品が互い違いに整然と並べられていて、取り出しやすくなってしました。バリとバリが引っかからない様に工夫されてもいました。

私は自分の作業が終わった製品は次工程の籠に無造作に投げ込んでいたのに、私の前工程の人は私が採り出しやすい様に、しかもたくさん入るように並べてくれていたのです。

学校を卒業してオーディオメーカーに就職した時初めて「次工程はお客様」という言葉を聞きました。情景とともにこの時のことを思い出しました。

私の前工程の工員のTさんは私と同年代でしたのでキャッチボールも卓球も一緒にしていました。口数の少ない優しい人で私の雑な仕事を咎めるでもなく、自分の仕事でお手本を示してくれていたのですが、私は社長に言われるまで気が付きませんでした。Tさんはキャッチボールや卓球と同じくらいに楽しそうに働いていました。

「さっきの製品は日産のスカイライン・ジャパンのバンパーだよ。あの金型の調整は俺が削ったんだよ」と自慢していました。当時の車のバンパーは鉄製だったのです。仕事を「苦痛」だと思っている人の仕事は、最終的に何になってどんな役割を果たすかを想像もしないし、次の工程の人への思いやりもなく、前工程への感謝の気持ちもありません。結局ボトルネックになって生産ラインの効率を低下させてしまいます。

仕事が好きな人は自分の仕事の最終形を想像し、次工程を思いやり、工場全体の効率迄も視野に入れながら、自分の工程の仕事をします。

業種が違っていてもTさんのような社員が皆さんの会社にもいらっしゃるのではないですか。目立たないけれど、不平も不満も言わずに黙って頑張る社員です。居て当たり前になっているけれど、当たり前だと思ってはならない真に宝、人財です。

 

こういう人と巡り合えるかどうかは偶然かも知れませんが、こういう人が会社を辞めないで定着し、外からも集まってくるかは仕組みと会社の風土づくり次第、社長次第です。

大きな声で不平不満を言った人が得をする「ごね得」体質には絶対にしたくないです。