見過ごしている、ケタ違いの成長軌道のポイント

平凡な会社をケタ違いの成長軌道に乗せる経営で重要ポイント以下2点について考え方、エッセンスとそれを見出した出来事ともにお伝えします。

15.一日の仕事分の気づきと成長

一日8時間仕事をすれば、いつも通りの一日であっても、全く同じ日はない。昨日までできなかったことが今日はでき、その逆に上手くやってきたことを失敗することもある。

毎日、一日分の経験をして、気づきと学び、失敗と内省、そして微差・僅差の1mm・2mmの成長がある。いつか、その先にまるで別人、一皮むけた個人と組織の成長がある。


 

■経験学習という経営の考え方がある。人の成長の70%は経験によるもので、残りの30%が書籍や研修、上司からのOJTによるものだという。

自分自身を振り返ってみると確かにそうだ。自分ながらに「結構、成長したのではないか」と思えることは、本で読んだり、上司に指導されたことよりも、実際に「経験」したことによるところが大きい。特に失敗や挫折など痛い目に合った「経験」のインパクトは思い出すだけで痛みを感じるほどである。

 

経験学習の考え方では、同じ経験をしても成長する人としない人がいて、両者の違いは「学ぶ力の3要素」にあるという。 ストレッチ リフレクション エンジョイメントがそれである。

ストレッチとは、問題意識を持って挑戦的で新規性のある課題に取り組むこと。 

リフレクションとは、行為・行動の後に内省するだけでなく、行為・行動をしている

最中にも内省する=試行錯誤を繰り返すこと。 

エンジョイメントとは、常にプラス思考で一見つまらない仕事、きつい仕事の中に意

義や面白さを見出すこと。

さらに、経験で成長する人は、「経験学習サイクル」という思考・行動パターンを意識・意図して、或いは無意識(習慣化していて)のうちに回しているという。

①具体的に経験する ➡ ②その内容を内省(振り返り)し ➡ そこから「教訓」を引き出して ➡ その教訓を「新しい状況に適用する」ことで学んでいる、という。 

                        (以上、ダイヤモンド社 松尾睦著 職場が生きる、人が育つ「経験学習入門」抜粋)

 

 

「経験学習」の考え方を取り入れ、クラウドを活用した仕組みで実践し、大きな効果を出している会社の事例を紹介します。

クラウドを活用した仕組みというのはクラウドを使った「日報」なのですが、細部にわたってよく練られていて、運用も自然に徹底されるよう仕向けられています。

《前日に翌日の仕事のブレイクダウンをする》

日報は前日書くところと当日書くところに大きく分かれています。前日書くところは、明日一日の業務内容をイメージし、ブレイクダウンして大まかなタイムスケジュールを立てるところまでです。タイムスケジュールも、ただ進行手順に時間を当てるのではなく、この仕事に投入できる時間はこれ位に納めたいという「時間予算の割り振り」です。予算を決めて買い物をするのと同じ発想です。予算オーバーは最大限回避します。

時間予算内に終わらせるために、どんな段取りを組むかも考え、あらかじめ誰に報連相し、どの段階で誰に承認を得るかも、一日の業務のゴールに向けた工程に組み込みます。

極端な例えで説明します。

100メートル走の競争場面をイメージしてください。位置について、よ〜い、ドンで走り出しますが、位置についてよ〜いが前日で、ドンが当日なのです。そして、走りながら自ら計測し、工夫し記録するのです。

《当日は仕事の区切りごとに進捗管理をします》

●計画した業務に実際に取り組みます。取り組みながら、完了した都度日報に進捗を書き込み、時間予算の残額を意識します。書き込みは気づいたこと、反省点、次回に生かせることのメモ程度のものです。しかし、その場その時のメモなので中身は濃いです。

予定通りに進んだか、気が付いたことはないか、予定外に時間が掛かったことはないか、反省点は何か、次回にどう活かすか。想定外のことが起きなかったか、その対処は上手く行ったか、どうやって上手く行ったのか、しかし、そもそもそれは本当に想定できなかったことなのか・・・

●業務時間終了時にはやり残したこと、今日の振り返りを書き、翌日の業務計画を立ててから退社します。

●話だけを聞くと管理されているような、時間に追われているような、窮屈・せわしない印象を持つかもしれません。ところがスタッフの皆さんは忙しそうなのにどこか余裕があり、雑談・会話もあります。なんだか「自分のペースで、仕事が見えている」感じです。

そもそも前日立てる業務計画・時間予算は自分主体で立てますし、関係者には予告したり、事前に依頼・調節しているので想定外の出来事以外はコントロール出来ているのです。

●上司は日報の確認を通じて部下の一日、どんなことを考え、どんなことを学び、どんな行動をして、どんな苦労があったのかを交換日記のように知ることができます。そして短くても心のこもったコメントをします。

《この会社の「日報」の最大の特徴

この会社の日報に最も特徴的なことがあります。

日報の中に「報連相」の欄があって、業務を通じて承認を得たいことや、上司や先輩に助言や指示を受けたい事を必要都度書き込みます。勿論、緊急性のある案件は、すぐに上司の席に向かうか、外出していたら携帯電話に連絡を入れます。

しかし、やや時間的な余裕のある案件は日報の報連相欄に必要事項を書いて、返事が書き込まれるのを待ちます。上司や先輩は社外に出かけていることが多いですし、社内にいたとして大事な仕事の途中かも知れません。できれば、やや時間的余裕のある承認や助言のためだけに仕事を途中で止めたくはありません。かと言って何時間も放置することはしません。一定の頻度の隙間時間でクラウドを開き、部下の報連相欄を確認し、必要な対応をします。

■上司の貴重な時間を割いてもらうわけですから、報連相欄への書き方には遵守しなくてはならないルールがあります。 

承認して欲しい事、助言して欲しいことは、判断しやすいように、助言しやすい様に工夫すること。承認や助言を求める側の責任として、相手(上司・先輩)に「解読させる」手間をかけさせてはいけないというものです。相手に手間をかけさせないように、自分でひと手間かけるのです。そのひと手間は・考えを整理する力・端的に文章にする力をつけますし、書きながらセルフコーチング効果で良いアイディアが思い付くことも多いのです。

《この会社の「日報」の最大の特徴

この日報は他のスタッフも見ることも、書き込むこともできます。社外秘の事項は書かないことになっているので自由に覗けるのです。

担当の枠を超えて情報・状況共有ができるので、本人が言わなくても「大変そうだね、手伝えるよ」と声を掛けることもできるのです。

最近は時間短縮ばかりが強調され、自分の仕事で精いっぱいになって、隣の席の人が何をしているのか、何を抱えているのか、どんな状況かもわからなくなっています。それにテレワークが重なって、同僚意識・仲間意識が希薄になっています。

この会社では隙間時間や自分の仕事の進捗管理のついでに、他の人の日報を覗き、報連相の欄も見て、自分にできる声掛けや手伝いを率先しているのです。非効率だから余分なことはするな、自分の仕事が終わったらさっさと帰れ、と他者へのお節介が禁止されることはありません。むしろ奨励されているのです。

《まとめとして》

一見、厄介で非効率で、社員に余分な負荷をかけさせている、かのように思えるクラウドを使用した日報ですが、それをはるかに上回る効果があるのです。

スタッフ個々人が自分でPDCAサイクルと経験学習のサイクルを同時に回し、日々問題意識を持ち、新規性のある課題に取り組み、しっかりと内省をしています。上司・先輩、同僚とも情報と状況を共有し、承認を得られないまま、助言を貰えないまま、分からなくて不安な気持ちのまま、放置され、孤独にならずにいます。

職場の人間関係はなれ合いとは違う、質の良い仲間意識が醸成されて、日報導入以前よりも生産性は向上しています。 

 

 

「働き方改革」ということで、目的が定性的で曖昧な業務をどんどん削る傾向がありますが、効率を追求することで社員が自分の頭でPDCAをコントロールする機会、仕事を経験学習に変える機会を奪ってしまっているかもしれません。そうなると、社員の成長は頭打ちになってしまいます。それは企業の成長力を無くしてしまうことにもなるのではないかと心配になります。

盛んに「学び直し」が新聞等で取り上げられていますが、特別な教育・研修、自己啓発促進策を考える前に、この会社のように「一日一日の仕事を学びの場」とすることが出来るのではないでしょうか。