会社の中にいい風が吹き、いい香りがする。居心地と働き心地のよい会社のシナプスの創造
◎会社・組織のシナプス、自主管理経営報告書による全員参加の交換日記、文書対話の仕組み化と継続
5年浪人して医学部に入り、小児科医になった友人と話をした時のことです。
人間の脳の一つ一つの細胞はシナプスという連結機能で繋がっていて、このシナプスに電気信号が流れて、考えや判断、記憶になるのだと聞きました。
シナプスという言葉の響きが新鮮で、考えや判断や記憶が電気信号だと聞いて驚き、自分の脳の細胞間にどんな電気信号が流れているのかと不思議な気持ちになりました。
ある会社の社長との雑談で「いい会社の中に入るといい風が吹いていて、実にいい香りがする」という話を聞きました。この社長の会社は経常利益率20%、超がつくほどの優良企業で、中小企業ながら新卒の応募者が一部上場企業並みに殺到するブランド力のある会社です。会社の中にいい風が吹いて、いい香りがする、なんとも不思議な話ですがこの社長の言葉には不思議な程に説得力がありました。
シナプスに流れる電気信号、会社のいい風といい香り、これを自分の会社に当てはめて考えてみました。
私が社員の皆に大事な話をした時、私が伝えたいこと、理解して欲しいこと、気づいてほしい事が、皆の脳のシナプスに同じ電気信号で流れているか。
真逆とまではいかないまでも、うがった見方をされたり、悪意に取られたりして予想外の電気信号になっていないか。
うちの会社にはいい風が吹いているか、いい香りがするか、自分では分かり難いけれど、来社されたお客様はどう感じているのだろうか考えました。
分かり易く言葉や表情、行動で反発してくれたら分かるけれど、内に秘められたらどうするか。内に秘められたら、存在するのに目には見えないすれ違い、ギャップが社員と私の間にできてしまう。存在するのに目には見えないすれ違い、ギャップが堆積して行ったら、いい風は吹かないだろうし、いい香りもしない。
もし、そうなったら、仕事は楽しくないし会社の居心地も悪いだろうから社員は辞めて行くだろうし、会社はやっていけなくなるだろうなと思いました。
私は新卒から7年間一部上場の製造業で働きました。その後十数人の小さな会社に転職し、26年務めて20年以上No.2の役割を任されました。
No.2の役割の中には採用もあり、20年間で300人以上の応募者と面接し、80人位採用して、60人位辞められました。歓迎会も送別会も繰り返されると意味を感じなくなり、そういう自分を嫌だなあと思いました。
No.2としての自負もありましたから、社長に責任転嫁はしたくないので色々考え試してみましたが、一番手応えを感じたのは「対話」をすることでした。しかも仕組みで良い対話を創り出し、継続するように工夫しました。
「対話」は言葉だけでなく、文字も含めて、こちらからより、むしろ社員の考え、気持ちを言葉と文字で「聴く、訊く」ことに重きを置きました。
とかく経営者は一方的に話すことばかりで聞くことを疎かにします。話を聞かせ、説得し、理解させることにエネルギーを費やしますが、聴くことも訊くことに時間もエネルギーも投入しません。No.2の私ですら、経営者気取りで方針発表したり講話をしたり、会議室でお説教ばかりしていたのです。今思うと恥ずかしい限りです。
言葉と文字の対話、社員がどう思い、どんなことに遣り甲斐を感じ、達成感を得ているのか、どんなことが辛くて、嫌なのか、会社の居心地は良いのか悪いのか、社長として耳障りな不平・不満も、ただの我儘だと片づけず、放置せず文字で訊いたり、耳を傾け聴くようにしました。
それが当社の自主管理経営報告書であり、独自の日報(クラウド日報ONEチーム)です。詳しい説明はここではしませんが、言わせるように、書かせるように仕向け、それをちゃんと聴くようにして応える。それを形に残し皆で共有し、私とだけでなく、全員で対話する。雑談の様で雑談ではなく、安心して本音を言えて、しかし、悪い事は悪いと即断し、誤解があったら最優先で解消する。しかも継続できるように仕組みにして、毎年毎年バージョンアップしています。
社員みんなのシナプスに良い電気信号が流れるように、会社にいい風が吹いて、いい香りがするように、それを一番に考えて、最近ようやくそうなってきた実感があります。