偶然見つけた「問いのデザイン」という本を読んでの気づきを紹介します。
普通の聞く・聴くと「問う・問い」ではどう違うのか、さらにデザインするってどんなことなのか知りたくなったのでこの本を手に取りました。(学芸出版社・安斎勇樹・塩瀬隆之著)
当社のコンサルティングパッケージの中に「自主管理経営報告書」という部門・拠点を結束させる仕組みがあります。パートさんから役員・社長まで「知恵と情報と思いを共有」するためのツールで、手前味噌ではありますが多くの企業に導入され経営者から高い評価をいただいています。
この仕組みには標準型がありますが、社内に結成する戦略チームで自社にあった構造と運用方法を作り込んでもらいます。
当方から基本的な考え方・目的・狙い・期待効果をレクチャーし、実際の導入事例をメンバーと分析しポイントを押さえます。その後いくつかの質疑応答を経て、具体的な作業に入りますが主導権はメンバーと社長に委ねます。
この進行の初期段階に「問いのデザイン」の考え方・手法を用いるとレクチャーの様子がだいぶ変わります。
当方のやり方は極端な言い方をすれば「言いたいことを全部」言って、当方の望む「解」に誘導していくのですが、「問いのデザイン」では言いたいことを質問に変えることになります。
初期段階の基本的な考え方・目的・狙い・期待効果の一方的な説明・説得の言葉は、「こういう仕組みを作って社内に運用したらどんなことが起こると思いますか」と言う「問い」に変わります。
説明・説得の場面では「この人(一応先生ですが)は何を言っているのだろう、自分たちに何をやらせたいのだろう、どう作れば◎がもらえるのだろう」と一所懸命「理解しよう」とし、あるであろう「正解」を見つけようとします。
ところがデザインされた「問い」は、メンバー一人一人にこの仕組みが社内で運用されたらどんなことが起きるか、自分はどういう影響を受けるかの想像を促します。恐らく「社内で反発される。今でも時間がないのに余分なことがまた増える」といったマイナスの考え・意見が溢れるように出るでしょう。
しかし、重苦しい空気の中で際限がないと思われた「マイナスのシミュレーション」もいつしかネタは尽きていきます。頃合いを見て「悪い事ばかりで良いことは一つもないのですか」と問いかけます。
すると一点の光、プラス発想で明るい方に目を向けた意見が出てきます。
「それはそうだけど、今のままだとうちの会社は何も変わらない。この仕組みは会社を変えるきっかけになるかもしれない」とメンバーの視点が現在から未来へと変わります。目には見えない潮目の変化です。
そうなると今のままの会社と変わるかもしれない未来の会社、自分はどちらの会社に居たいのか。何もしないでブーブー言っている自分と、ダメもと覚悟で明るくチャレンジする自分のどちらになりたいか、自己責任の自己選択となります。
当方の説明・説得でスタートする「やらされ」の取組みと、実質的なスタートに時間が掛かったとしてもメンバーが選んだ未来に向けての取組みでは成果に大きな差が出ます。
一方的な説得・説明によって「分かりました」と言われた後のかすかな虚しさと不安はコンサルタントだけではなく、中小企業の経営者の皆さんにも身に覚えがあるのではないでしょうか。こちらが言いたいこと、分かって欲しいことを想いと共に熱く語ったときは相手の目や表情が気になります。すぐに理解できて伝わるものでもないと分かっていてもその場での腹落ちを期待してしまいます。
そこまで待てない、待ってられないと思うのが本音のところかも知れません。
当方の小さな気づきで恐縮ですが中小企業の経営者にお勧めです。
やろうとすると案外難しいのですが、言いたいこと、分かって欲しいことを「問い」に変える。相手がその場で腹落ちしなくて時間が少しかかっても、晴れ晴れとした腹落ちの表情と言葉を楽しみに待ってみるのも良いものだと思うのですがいかがでしょう。