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代表コラム その仕事・業務は、誰にどんな価値を提供するのか

あなたならどちらの会社を選びますか

同じ業種、同じ職種であっても、どんな会社でその仕事をするかで働く側の気持ちは違います。仏壇・墓石販売の企業をお手伝いした時の実例(20年以上前)で、以下のようなことがありました。

仏壇を購入するのが初めてではなく、買い替えと言う場合、古い方の仏壇の扱いに困るのです。普通の家具とは違ってご先祖様の住いだった訳ですから、簡単には廃棄処分はできません。そこで仏壇屋さんの方で引き取って、「お坊さんに来ていただいて供養してから焼却します」と提案する。お客様は「ありがとうございます。安心できます」と感謝します。

私がお手伝いした会社の経営者は立派な方で、そう言うことには一切手を抜かない人でしたから、一旦は倉庫に保管して置いて、一定の数が揃ったらお坊さんをお呼びして、供養してから処分することを徹底していました。しかし、別の仏壇・墓石屋さんではお坊さんをお呼びすると言っておきながら、ひどい扱いをしていました。規模が大きな老舗なのに、です。

同じ仏壇・墓石販売と言う業種です。お客様の相談に乗りながら高額な仏壇を販売する仕事です。しかし、働く側にとっては気持ちの面で大きな違いがあります。一方では専門知識を求められ、感謝され、誇りが持てる仕事ですが、他方では「こんな売り方していていいの?人としてどうなの?」と自信がなくなります。仮にお給料が2割3割高くても後者の会社で働きたいと言う人は希だと思います。

・・・この職務の目的は「ご家族が気づかない体の異常の発見」です

業種・職種が同じでもどんな会社でその仕事をするかで働く側の気持ちの違いの話をしましたが、そういうことをさらに深めていくと、同じ職務であっても、その職務をどう定義づけするかで一つ一つの作業の内容が変わる、と言う事例を紹介します。

ある介護事業者から「当社はグループホーム95か所、デイサービスの施設13か所、その他居宅介護支援事業所、看護ステーションを運営していますが、デイサービス部門が赤字でお荷物なのです。何とかなりませんか」と言う依頼を受け「自主管理経営」の仕組みの構築・運用支援をさせていただくことになりました。

その支援過程の中で「職務の再定義」と言うプロセスがあります。それは日常の一つ一つの職務の本来の目的は何か、誰にどんな価値を提供するのかを検討して、作業の手順や内容を変えていこう、と言うものです。

デイサービス部門の責任者である施設長に集まっていただいてグループワークスタイルでディスカッションを進めました。その中で感動した職務の定義を2つ紹介します。

 

①    入浴補助

利用者さんをお風呂に入れてあげて清潔にすること、或は、利用者さんに「生きてて良かった」と思える気持ちの良いひとときを提供してあげること、と言うのが大半の意見でした。両方ともそれなりに良いのですが、ある施設長さんから「ご家族が気づかない体の異常の発見」と言う意見が出ました。理由を聞くと、事故のリスクがあるので、自宅でお年寄りをお風呂に入れなくなり、おじいちゃんやおばあちゃんの裸を見なくなる。だから着替え程度では見つけにくい体の異常、あざとか皮膚の病気とかに気が付かなくなる。でも入浴の時には裸になってもらって隅々までチェックすることができる。」ということでした。同じ入浴補助でも行動が大きく変わるし、その成果も変わります。ご家族も安心です。

②    お迎え

利用者さんを自宅に迎えに行くこと。それはその通りなのですがもっと深めることはできませんかと言うことで意見交換をしたら「一期一会」と言う意見が出てきました。理由を聞くと昨日まで元気だった利用者さんの体調が急変して亡くなってしまったと言うことがありました。私たちの仕事は利用者さんといつかはお別れしなくてはならない仕事なのです。明日も会える保証はないのです。だから今日も会えて嬉しいと言う気持ちを伝えることがお迎えです」と言う事でした。

どんな介護施設にもある「入浴補助」と「お迎え」ですが、職務の定義づけ次第で全く別の仕事に思えます。介護施設の中でも、デイサービスは「来ていただいて、利用していただいて」初めて費用請求ができる出来高制なので、「今日は行きたくない」とキャンセルされればそれまでなのです。体調が悪いのであれば仕方がないのですが「あそこに行っても楽しくない、あそこの職員は感じが悪い」などの理由でドタキャンされると経営が成り立たなくなるのです。この施設の稼働率は70%を切っていましたが、職務の再定義等を通じての意識と行動の変化が、利用者さんに受け入れられて、85%を超えるようになったと思います。

仕事は具体的な「行動」によって実現し成果を出します。しかし、行動のベースにあるのが気持ちや思いです。そしてその気持ちや思いはその仕事に誇りが持てるか、その仕事を好きになれるかどうかで大きく変わると思います。そう言ったことを社員と一緒に考えていくことは大事なことではないでしょうか。