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代表コラム 「顧客から選ばれる会社」である前に「良い人財から選ばれる会社」であるか

「ドライバー」の仕事が好きなのか「この会社のドライバー」の仕事が好きなのか

車両数50台ほどの大変ユニークな運送会社があります。社長は元暴走族だそうですが、そうは見えないジェントルマンです。この会社のドライバーは社長とも上司とも同僚とも大変仲が良く、全員会議で集まった時はワイワイガヤガヤ楽しそうに会話をします。しかし、いざ社長の話が始まると会場はシーンと静まり社長の登壇を待ちます。「実は私はアデランスになった」との告白からはじまり、爆笑の中で経営方針が発表され、「今は2拠点だけれど10年間で6拠点、事業内容にも運送だけでなく、保管も加えるし、システム開発にも力を入れる。売り上げ規模を10倍にする」と力強く宣言されました。

一般的な中小企業なら「社長は何を言っているんだ。口ばっかり」と社員の反応は冷ややかなものになると思います。しかし、この会社は違うのです。みんな目をキラキラさせて聴いているのです。当然若い人たちばかりではなく、平均すれば45歳は超えてしまいます。なのに白けた感じは全くしません。「社長がそう言うのだから、そうなっちゃうのだろう」と素直に受け入れる。この会社の社員は単に「ドライバー」と言う仕事が好きなのではなく、「この会社でこの社長のもとでドライバー」と言う仕事をするのが純粋に大好きなのです。

こういった、まさに企業文化と言える状態は自然にできるものではなく、社長の「社員を幸せにする、この会社に入って良かった、と言ってもらいたい」という、信念をベースとした様々な取組みの結果だと思います。

「学ぶ社風」の原点は本気の「ES(従業員満足)の追求と実現」

車両数は1100台、社員数4000名の食品物流の会社があります。この会社の経営理念には「CS=ES=CS」の一文が入っています。現在の社長は3代目(家業時代からは4代目)なのですが社員を大事にするという遺伝子が代々受け継がれていて、社員に良いこと、喜ぶことをいつも考えていて、色々実行し、惜しみなく投資もしています。荷主からの切なる依頼を受けて、全くの新規の地域に物流センターを設置することが急速に増えているのですが、ドライバー不足の時代なのに採用は順調です。色々な工夫をした上でのことなので、簡単に集まっている訳ではありません。

中途採用者は入社して1・2年経過すると本社に集まって研修を受けることになります。そんな時、たいていの社員は「研修か面倒くさいな」と思うのではないでしょうか。私もメーカー勤務時代に多くの研修を受けさせられました。イヤイヤながらのやらされ感で都内の研修施設に出かけて行ったのを覚えています。しかし、この会社は違うのです。研修に集まると「いつもは会えない仲間に会えた」と言う感じで楽しそうなのです。研修内容は結構高度なカリキュラム構成になっているのに「むずかしい」と言いつつも真剣に取り組む姿が初々しいのです。

ある時、中途採用で入社し1年位経過したドライバー同士の会話を耳にする機会がありました。「俺、車の運転が好きだから、色々な会社でドライバーの仕事をしてきたけれど、会社に対して、何かこう、会社好きだなあって言う愛社精神みたいなのを初めて感じたよ」と言う内容でした。大変感動しました。

また、社長も研修講師を受け持ちますし、研修後の懇親会にも出席するのですが、この場面も楽しそうなんです。何が普通かと言われれば答えが難しいのですが、4000名もの会社の社長が中途採用の社員たちに囲まれて、笑いの中心にいるなんて普通は考えられないことだと思うのです。この会社とは先代からのお付き合いなのですが、その方が「本当の社員教育は、辞めたくないと思える会社にしないと出来ない」とおっしゃっていましたが、こう言うことなんだなあと実感します。もしかしたら「勉強するのが嫌だし、人と接するのが面倒だからドライバーになったんだ、研修なんかまっぴら」と反発されていた時代があったのかも知れません。しかし、本当のES(従業員満足)には社員を成長させる教育が必須だとの信念を貫き、それが引き継がれ、当たり前の様に「学ぶ社風」ができたのだと思います。

会社の規模は違いますが、両者の共通点は口先のきれいごとではない、本気の「ES の追求と実現」だと言う事です。こういう会社にとっては「ドライバー不足」は脅威ではなく、事業拡大のチャンスなのではないでしょうか。いくらドライバー不足だと言っても「高速道路を走ればトラックだらけ」です。同じドライバーの仕事であってもどの会社なら、やりがいが持てるか、仕事が好きになれるか、なのだと思います。

顧客から選ばれる前に良い人財から選ばれる会社になることが事業躍進の決め手になるのだと思います。